毎日が何かの日

Always Something

扉を開くもの

「ああ、そうだ。これをあげる」と、わざとらしいさり気なさで彼女に封筒を渡した。
「え?なに?プレゼント?」と彼女はにこやかに封筒をうけとった。
「大したものじゃないよ。なんていうかただの自己満足で、ちょっと渡しておきたいだけなんだ」
「ん?なんだろ?」
 
そして中身を見た瞬間、彼女は体を折って笑いだした。
「ええ!?ちょっとー、これはー?」
大声を上げながら戸惑っている様子。
 
「僕の部屋の鍵だよ。持っててくれるとうれしいな。」
「いいの?」
「なんていうかさ、ただ単に『彼女に部屋の鍵を渡す』って遊びがしたいだけなんだよ。」と僕。
 
実のところ、鍵を渡すかどうかはちょっと悩んだ。
別に僕がいない時に、彼女が勝手に部屋に入ることは問題ない。
パソコンとか漫画とか本とか机の中身とかを見られることに心配はしていない。
心配しているのは、彼女がこういった特別扱いに眉をひそめること。
まだ付き合ってからの日が浅すぎるかもしれない。
 
「……こんなことされたのは初めて」と彼女は鍵を物珍しそうに眺めている。
「こういうの嫌だったらやめるけど?」
「いやいや。ウレシイデス」
 
とりあえず鍵は持っておいてもらえそう。
これで僕との生活への距離感覚がより近くならないかなー。