毎日が何かの日

Always Something

思いがあふれた

職場にとても気になる女性がいる。
でも彼女には彼氏がいて、一緒に旅行したり、すごく楽しそう。
いいことだ。
彼女は彼氏のことが大好きで、とても良い関係に思える。
端からこれを壊したりする気にはなれない。
 
でも僕は、多分、彼女のことを知れば知る程好きになってしまうだろう。
だから、あまり知らずに、程よい距離を保って、仲良い雰囲気で、職場の仲間として、この淡い恋心は淡いままの泡としてそのうち消してしまいたい。
 
 
「彼氏とは別れるかもしれない」
ふとそんな台詞を彼女から聞いた。
なんでそんなことになってしまっているのだろう。

理由を聞いた。
その理由はここには書けないが、彼女達の状況は納得できた。
人それぞれの根本的な生き方の問題なのだろう。
互いに歩み寄れず、共存が苦しい環境というのはある。

ふと、過去の自分のケースを連想した。
実は僕も似たような別れ方をした経験がある。
互いに好意を持っていても共には歩めないこともある。
彼女達が別れるのは時間の問題だろう。
やるせない。
でも、僕にはこれはチャンスなんだろう。
そう考えた。
 
 
それからいろいろと誘うことを増やし、2人で食事に行ったりする程度には仲良くなった。
昔の話、恋愛の話、家族の話、仕事の話、勉強の話、趣味の話、友達の話。
いろいろと話をしたけど、まだまだ話したらないし、話せばどんどん心惹かれていく。
僕の恋心は充分に育ってしまった。
もう無視するには辛すぎる。
 
多分、彼女は僕に好意を持ってくれてはいるだろう。
でもそれは、男性へというよりも、兄貴的で先輩的で父親的。
そんなようなもの。
僕と恋愛をするということを意識してはくれないのだろうか。
 
 
「彼氏とは別れたんだよ」
今日、2人でパスタを食べている時に彼女が話してくれた。
「きちんとケリをつけたの?」と僕。
「うん、そう」と彼女。
そして「ああもう、若いうちに結婚して子供産みたいのにー」と悲しそうに笑った。
 
 
ああ、僕は彼女が欲しい。
僕が知る前からの彼氏と歩む彼女には、笑顔で祝福を贈れただろう。
でも、これから彼女が他の男性と歩んでいく姿は……僕を死に至らせる。
彼女は僕にどんな好意を持ってくれているのだろう。
 
 
いつの間にか会話は、職場での恋愛話へと移っていた。
彼女は「Aさんに『彼氏とは別れました』って言ったのよ。そしたら『Bなんてどうだ?いいやつだろ』とか勧めてくるの」と笑っている。
 
「ねえねえ僕は?どう?」
 
思わず口に出してしまった。
彼女の表情が変わった。
「はぁー?」
冗談だよ、とは言いたくない。
 
「僕は○○さんのことかなり好きなんだ。○○さんの彼氏にはなれないかな?」
 
彼女は椅子の背に体重を預けながら笑っている。
「なんでそういうこと言うかなー」
「ああ、口が滑ったよ。愛の告白にはもうちょっと時間を置くつもりだったんだけど。」
「というか、こう軽く言われても……私、彼氏と別れたばかりだよ?」
「軽く言っちゃったけど真面目なんだ。彼氏と別れたと聞いたら言いたくなったんだ。僕は○○さんのことが大好きです。付き合ってもらえませんか」
「ええーと、ちょっと話題を変えよう。これは後にしよう」
 
 
ああ、言わなきゃ良かった。
これからを普通に仲良い友達として過ごせるだろうか。
それからの会話はたわいもない雑談で、にこやかに楽しい雰囲気で終わらせた。
 
帰り際、「さっきのこと、ちょっと真面目に考えてみるね」と彼女。
「ダメでも今まで通りに仲良くしようね」と僕。
 
すごく泣きたいのに、顔は笑顔だったと思う。